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dotはじめに
年が明けて最初の土曜日、進路指導部とサポートセンターの第2回目の合同企画「シンポジウム『留学と進路』」が開催されました。今回は、4名の先輩方にお越しいただき、それぞれの留学体験についてお話いただきました。海外で生活しなければならない留学は少しハードルが高いと感じている生徒たちに、実際の生活や進路への影響、良かったことも悪かったことも面白おかしく紹介してくださり、出席した生徒たちも興味津々に聞き入っていました。

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pen赤尾 真祐子 さん(本校H20年度卒 京都府立大学文学部3回生) 留学先:中国
日本文学と中国文学を勉強なさっている赤尾さんは、語学の先生に誘われて、中国の西安へ半月の短期留学を経験されました。様々な国からの留学生が今注目の中国語を勉強しにやってくる中で、彼女も同様に留学生用の授業を受け、日本人は他の外国人よりも漢字が書けるという点で大変有利であると感じたそうです。また、中国は歴史的、文化的価値の高い国です。留学中は様々な遺跡を巡り、また身近な生活空間の中でも異文化を感じることができたと、いくつかの興味深い写真を提示しながらご説明いただきました。教科書に載っている世界を、実際に自分の肌で感じることができるのが、留学の魅力であるとのことでした。

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pen伊東 ひさこ さん(本校H12年度卒 京都文教大学卒) 留学先:カナダ

大学三回生の秋から11ヶ月間カナダのトロントへ留学されていた伊東さんは、とてもフランクで明るい人柄がよくわかる、楽しいプレゼンテーションをしてくださいました。伊東さんは、研究のためのフィールドワークや留学生との討論を通じて英語の必要性を痛切に感じ、留学を決意なさったそうです。ホームステイによって文化の違いを知り、「外国人」としての日本人、日本での当たり前が当たり前ではない世界、イメージばかりが先行する日本人像を目の当たりにして戸惑ったとのこと。しかし、留学において最も大切なことは、そうした感覚を、帰国した後いかに昇華するかだそうです。何事にも、前向きに積極的に行動することが成功の鍵だということが、生徒たちにもよく伝わったのではないでしょうか。
 


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pen杉岡 茉美 さん(本校H19年度卒 大阪大学外国語学部3回生) 留学先:トルコ
高校生の時、さほど中近東に興味があったわけではなかった杉岡さんがトルコ留学を決意したのは、大学でトルコ語を勉強する中、実際に行ってみることで、新たな興味が湧くかもしれないと思ったからだそうです。留学先は、政治都市アンカラ。ヴィザンツやヒッタイトの遺跡が数多く残り、異文化の香り高いトルコ国内でも、学生が多く落ち着いた環境のこの都市で10ヶ月を過ごされました。トルコは親日派で、日本の近代化をモデルにして建国されたとのこと。彼女自身も様々な遺跡を巡り、現地の人々や様々な国の留学生たちと異文化交流を広げられたようです。そこで感じられたことは、日本人がいかに消極的かということ。トルコ人は自分の文化に誇りと自信を持っています。だから、私たちは日本人代表として、人柄や生き方によって信用を得るために、自信を持って自国の文化を伝えることが大切だと教えてくださいました。また、現地での生活の中で大使館にお世話になる機会が多く、その影響もあり、今は外交官になる夢を持って勉強していらっしゃるとのことです。

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pen佐分 那美 さん(本校H16年度卒 同志社大学卒) 留学先:アメリカ
現在は、大手企業の人事課で働いていらっしゃる佐分さんは、就職活動中に一念発起し、留学を決意されたそうです。留学先は、とりあえず興味のあったアメリカを選択。シアトルのコミュニティカレッジ併設の語学学校で9ヶ月間過ごされました。アメリカは世界各国から留学生を受け入れているため、短期大学などに併設された語学学校が盛んで、彼女も最初の6ヶ月間で語学を基礎から学び、最後の3ヶ月には短大で興味のある講義を受講していたとおっしゃいます。ホームステイや寮での生活を経験し、世界中の様々な人々と交流した佐分さんは、現在、世界各国の人々、特に中国の人々を採用したり、今いる人材をグローバル化する方法を考えたりといったお仕事をなさっています。留学で身につけた英語力、積極的にコミュニケーションする力が、まさに仕事に直結しているとおっしゃいます。だから、留学中は確かに辛いこともあったけれど、案ずるより生むが安しの感覚で、チャンスがあれば是非とも留学してほしいとのことでした。

 

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2nd

dot自分で計画を立てること。
用意されたプログラム通りに行くよりも、自分で計画を立てた方が積極的に勉強できます。

dot目的を定めておくこと。
語学の習得は日本にいても可能です。海外で生活する貴重な時間ですから、それ以外の目的も何か一つ掲げ、無駄のないように過ごした方が良いようです。

dot日本文化について見聞を広げておくこと。
海外において日本人留学生は日本人の代表のように扱われます。日本の文化について質問されることもしばしばであるので、自国の文化をよく知っておかないと説明できません。実際には、アニメや食べ物、文学、芸能と多岐に渡った質問をされたそうですので、日本にいる内にあらゆる文化に精通しておく必要がありそうです。

dot制度面、金銭面について。
私費留学でいくらかかるのかよく調べておく必要があります。奨学金の制度もあるので、どのような制度を利用するのか計画を練りましょう。また、帰国後のことを考えると、交換留学制度がお勧めだそうです。

dot英語を学んでおくこと。
英語圏以外の国へ留学する場合でも、英語なら通じることがあります。

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dotまとめ
パネリストとの意見交換も盛んに行われ、はじめは留学に消極的であった生徒も、徐々に留学を現実的な選択肢として見据えるようになったようです。それぞれの進路を考える上で、留学は決して些細なことではありません。ともすると、自分の中にある既存の考え方や、知らず固執していた偏見などを覆すきっかけとなり、それは人生の大きな転機となるでしょう。だから尻込みせず、チャンスがあれば是非という気持ちを忘れないでほしいと、パネラーの方々は口を揃えておっしゃいました。一時間半にわたるシンポジウムを終えて、参加した生徒たちの中で、留学という一つの進路がより現実的で明確な形を帯び、積極的に選択される指針となることを期待します。