top › 高石浩一先生(PAGE1)

Vol.7 魂、そしてインターネット。マルチな高石先生に文教の院生がインタビューを行ってきました。

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● 仕事としての心理臨床

院生:
それでは質問はじめてよろしいですか?
高石:
どきどき、わくわく、はらはら…(笑)。僕は人見知りするから、こんな機会じゃないと自分からしゃべらない。今年は、できるだけ人見知りしないようにしゃべろうと思ってるので、よろしく。
院生:
こちらこそ。それでは質問ですが、高石先生を臨床心理学につき動かした原動力は何ですか?
高石:
う~ん…たぶん僕は、最初からずっと逃げ腰でしたよ(笑)。大学院も社会人になるのが嫌で入ったし…。臨床心理学は“自分のことに直面せないかん”とか言うけど、僕はその前にまず仕事だと思っている。仕事だから、給料分働けばいい。その際に、何が一番大切かというと、相談に来る人に対して、最大限サービスができるかということで、自分と直面するとかあんまり考えていない。自分の問題は、仕事を遂行する上で整理しないといけないけど、少なくとも最低限クライエントさんに害を与えないように、自分の中でコントロールしていればよい、って感じかな。 逆に言うと、持っているものは“仕方ない”。僕は偉そうに言われると、「あほか、お前は!」とすぐ反抗してしまう癖があって、これはエディプスコンプレックスとかファザコンなんだけど、そう言われたって、その通りでございますと応えるしかない。ただクライエントさんに偉そうに言われた時には、プリミティブな反応をしないように一歩引いて、「どうしてこの人はこういう形で言わざるを得ないのだろう」っていうスタンスで見る。そういう工夫はしているけど、自分はなんて情けないんだろうとかいうふうには、あんまり悩まない。仕事だからやっているので、自己成長のためにやっているわけではないのでね。
院生:
それが長く続けているコツですか?
高石:
う~ん、コツかなあ…でも絶対タフでないとあかんと思うよ。それと相手のことがわかってくると、嫌な面が見えるっていうのもあるけど、いい面も見えるわけじゃない?だからいい面を見る、好きになるんです。そうすると続けられますね。嫌な面が見えたときは、「何でこうせざる終えないのだろう」と「せざるをえないもの」として見るの。相手がそう「したいからしている」と思ったら腹が立つけど、「どっかで誰かに、そうさせられている」、「そうしないとやっていけないからそうやっているのだろう」という観点でみたら、もう一歩背後にある気持ちに踏み込める。そうすると腹が立たない。
院生:
いつからそれができるようになったんですか?
高石:
30越えて仕事でやりだしてからかなあ…。学生時代はあなたたちと同じで、反省ばっかりしてた。仕事でやりだしたら、反省する前にクライエントさんが来ちゃうからね。
院生:
頭の中でとりあえず考えておいて、仕事始めたら、切り替える?
高石:
仕事としてやりはじめると、切り替えざるを得ない。やる前は色々考えちゃうんだけど…みんな恐がってるよね。最初にケース持つこととか、みんなドキドキしてるでしょ?それはやったことないから当たり前だよね。
院生:
ケースを持つことというか、持って失敗することを…。
高石:
でも、なんでそんなに失敗を恐れるんだろう…。セラピーは人と人との出会いだから、うまいこといかなかったり、相手の機嫌を損ねたりというのもあるけど、そういう出会い方をしたというだけで、失敗ではないでしょ?恋人同士なんて、最初お互いにけんかして、なんやアイツなんてと思ってた人と恋に落ちたりするわけじゃない。出会いなんて、そういうものだから、あんまり失敗とか成功は考えなくてもいいと思う。要は後で後悔しないように、精一杯やるということです。毎回後で「ああしといたらよかった」、「こうしといたらよかった」と思わないで済むくらい、一所懸命やるってこと。なかなか難しいけどね。しょっちゅう「あー、しまった」って思う…。
院生:
全力でやってると、「こうや!」って思ってしまうから、後からなぜこうしたんだろうって思うこと多くありません?
高石:
それは構わない。その時は一生懸命やってるんだから…。じゃあ次にどうしよう、って考えればいいんです。言う前に考えたり、やる前に考えるのは…してしまうんだけど…自分の直感が信じられるようになってきたら、考えなくて済むようになります。
院生:
直感が信じられる瞬間って来るんですか?
高石:
瞬間はないね。ちょっとずつですね。自分の調子を整えて面接していて、自分の中で相手の人と時間を共有できたっていう実感が、キチッと持てるような体験が重ねられていくと、これでいいかなっていう感じにはなっていくね。あなたの中にある疑問は、そういう瞬間が来るかということ?
院生:
そういう瞬間が、長いことやっていたら来るのかな?とか思いました。
高石:
時間のファクターは大きいよね。それと、面接以外で考えてるのも大きいかな。「なんで治るんやろ」とか「なんで共感したら救われたような気になるんだろう」とか、未だにわからない…。
院生:
「人は聴いてよくなるのか」とか。「魂はあるのか」とか。
高石:
そうそう。あれ、みんな素朴に信じてるよね。
院生:
先生はどう思われます?
高石:
中井久夫先生が書いてるけど、「自分と出会うことが患者のためになると思うことは治療者の思い上がりだ」って。「来てもらえたら」みたいな言い方を初心者のときはするでしょう?でも、一所懸命あれこれ考えすぎて、ぎこちなくなって、相手の人に気を遣わせるような面接やったら、来て頂くのは申し訳ない。基本的にクライエントさんのためになろうと精一杯努力はしているから、来てくださいという気持ちはわからないではないけど、本当に相手の人のためになっているかどうかは考えないとね。
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