Teacher's LinkTop 現代社会学科 教授 島本 晴一郎

※3.ステークホルダー

日本語では企業の利害関係者という。企業の行動に直接・間接的に関係する者をさす。企業の利害関係者の範囲は考え方によっても異なるが一般的には、投資家、債権者、顧客(消費者)、取引先、従業員(社員)、地域社会、政府・行政が含まれる。

chapter II 企業の不祥事が続くなか、 高まるCSRの重要性
 アメリカのエンロンの経営破綻、日本の雪印乳業の食中毒事件、日本ハムの食肉偽造事件など企業の不祥事が相次ぎ、また情報化時代を迎え、企業の情報開示などへの社会的な要請も大きくなるなかで、CSRの重要性がクローズアップされてきています。「CSR」(Corporate Social Responsibility)は、日本語に訳すと前掲の通り「企業の社会的責任」となります。今までも企業は、社会に対して製品・サービスの提供や雇用の創出、税金の納付などを通じて社会に貢献してきていますが、環境にやさしい製品を開発したり、社会活動に積極的に参加したり、あるいは財務状況などの企業情報をよりオープンにしていくなど、より広い視野から社会に対して責任を持つべきだという考え方が、CSRだといえます。
 CSRを考えるうえで重要視されているのは、企業の利害関係者(=ステークホルダー)※3を考慮することです。企業はこれまで、自社の利益をまず考えてきましたが、長期的に繁栄をするためには、企業を取り巻くありとあらゆるステークホルダーとの関係を、友好に保つことが必要です。これらステークホルダーとは、企業の株主や融資者、従業員、取引先、顧客・消費者、企業の工場がある地域の住民や自治体など、広い範囲を含みます。
 今後、企業にはますます広い視野を持つことが求められるでしょう。事業を行う際に、事業がまわりの環境にどんな影響を与えるかにまで目を向けることへの必要性が高まります。それはすなわち、人間が今後も発展を続けていくために、長期的な利益を考えながら責任ある経営活動を行っていくことを意味します。持続可能な開発(※3)や持続可能な経営といった、最近よく耳にする言葉はCSRの概念をより広くとらえたものだといえるでしょう。

 私は、CSRを国際協力の立場からとらえようとしています。これまでは、貧困削減につながる開発途上国への技術供与や、資金援助などの国際協力は、日本であれば外務省や国際協力機構(JICA)あるいは国際協力銀行(JBIC)などの2国間機関、あるいは世界銀行などの国際機関が主導して行ってきました。しかし、現代においては公的な機関と、現地でのノウハウを豊富に持つ民間企業、あるいはNGO・NPOなどの市民団体が連携する必要性が高まっています。その理由は大きく三つあります。一つ目は、2国間機関、国際機関を問わず、公的な資金が枯渇し、開発に関するコストを公的なものだけではまかなえなくなりつつあること、二つ目には、特に現地の受益者にその援助効果を直結させ、プロジェクトを効率的に進めるためには、民間企業や現地に根ざしたNPOなど市民団体の知恵が不可欠であること、そして三つ目には、何よりもグローバリゼーションの進行により、民間企業の国際化が地球の隅々まで進んでいることです。

 こうして見てみると、公的な機関が民間の活力を積極的に利用すること、そして民間企業がより広い視野を持って社会全体の利益のために経営活動を行うこと、これら二つには、重なり合う部分があるのではないでしょうか。私はこの重なる部分において、有効な官民の協働のあり方をいろいろ探っていきたいものだと考えています。

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