あーゆす10号4頁

『ハッピーバースデー : 命かがやく瞬間』を読んで
幼児教育専攻2回生  太 田 裕 子

この本に出会ったのは、中学生の頃です。ちょうど、読書感想文の課題図書が店頭に並んでいたのですが、その中で、題名と、表紙の悲しそうな顔の少女の絵に心惹かれ、どのような内容の本なのかと思い、買って読んでみることにしました。

「おまえ、生まれてこなきゃよかったな。」 7歳の誕生日の日、あすかは兄・直人に言われます。仕事が忙しい母親は、今年もあすかの誕生日を忘れているようです。それでも淡い期待を持って母親の帰りを待ちますが、帰ってきた母親と兄との会話から、「あすかなんか生まなきゃよかった。」という一言を聞き、声を出すことができなくなってしまいます。田舎の祖父のところに、静養しにいくあすか。自然とともに暮らす中で、生きる力と声を取り戻します。その後、自分の気持ちを言葉で伝えることを恐れず、いじめに立ち向かったり、障害のある友だちとの交流、祖父の死、友だちの死を乗り越え、あすかは自分の生きる道を切り開くことができるようになります。

なぜ、母親に愛されないのだろうか。自分が悪いのだと思い、自らの思いを閉じ込めるために、のどをつまみ、声をださないようにしたあすかの行動は、想像するだけで涙がでそうになります。愛されていないと分かっていても、それでも母親への期待は捨てることができないために、我慢をし、そのような行動につながったのだと思います。そして、自分自身は母親を愛しているから、期待しつづけられるのだと思います。

私にとって、話をするということは、生きている中で、一番大切だと言っても良いくらいのことです。それを、誰かに奪われたりしたら、ストレスでいっぱいになり、死んでしまいたくなると思います。幼い子どもだと、私が感じる以上に、大人から言葉で心を押し殺されるということは重いと感じました。

この本の内容は、主に、母親による子どもへの精神的虐待がテーマになっています。この本を初めて読んだ頃は、まだ"虐待"という事件が、それほど大問題としてとりあげられていたわけではなく、今と違い、授業で学んだわけでもなかったため、主人公のあすかの気持ちになって読んでいました。

しかし、母親にも、振り返りたくない悲しい過去があったのです。病気の姉に両親はかかりっきりで、どれだけ頑張っても親を振り向かせることはできない。"良い子"でいることで親を安心させ、それを演じるうちに心まで無くしていたのです。どんなことの背景にも、隠された真実があるのだということが分かりました。

子どもは、親の前では、いつでも"良い子"でいたいものです。しかし、親の期待に添えないのが普通だと思います。一人ひとりの個性があって、子どもでもその子の考えがあります。今の世の中は、特に、親の考え方で人生を歩んでいる子が多いのではないかと思います。あすかのように、自分の気持ちを押し殺して、声を出さなくしている子どももいるかと思うと、胸が苦しくなります。

この本を読むと、"生きる"ということについて、今一度考えさせられます。人に傷つけられたり、人を傷つけたりして人間は生きていますが、「言葉にする」その一言の重みを感じて話さなければならないと思います。そして、一人ひとりの命、世界でたったひとつしかないその命を、大切にしなければならないことを、改めて感じさせられました。みなさんも、ぜひこの本を読んでみてください。

『ハッピーバースデー : 命かがやく瞬間』 青木和雄 作 / 金の星社

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