あーゆす11号3頁

私 の す す め る 3 冊
助教授(声楽)  北 川 喜 美 子
1 『がんばるの火』 梅村淳著 / 東銀座出版社
「こころは雨/人が死んだ/こころはさびしいです/こころのなかは雨です/こころの目から水がでた」 出産時より脳性マヒの重い障害をもつ彼は詩人である。「ことば」としての発声ができず、比較的自由に使える左手でワープロを使い自己表現をする。小・中学校と母子通学、現在の生活の場である「生活の家」でも母子通所が続く。ご家族の皆さまにエールを送りたい。不自由な体で挌闘し、がんばっている生活のようすが、愛や感謝の気持が1文字1文字きざまれている。その叫びが伝わる素晴しい詩集である。
2 『ニホン語日記』 井上ひさし著 / 文芸春秋社
私は、専門が声楽なので「ことば」には大変興味がある。若い人の使う言葉は勿論、業界のマニュアル語や新聞の見出し、特に前日に起った事件等がどのような活字になって次の日の新聞に載るかが楽しみなのだ。いろいろな角度から愛情をもって厳しく問題点を指摘している本である。中でもびっくりしたのは横浜の中華街での大学の盛り場研究会の「ここのどんなところが、あなたは気に入っていますか」というアンケート結果の1位が<安くておいしい>であったが、6位に<この街に入ると、看板もなにもかも漢字なので落ちつく>という言葉があった。漢字は見ていて意味がわかり、落ちつくというのだ。今のカタカナ外来語の大氾濫に疑問を感じている人も多いのではないだろうか。
3 『リズムは心に響く』 エヴェリン・グレニー 著 / サイマル出版会
スコットランド北東部の農場で育った音楽好きの少女が12才で聴力を失うが、音楽部門のある学校に進学し、さらにロイヤル音楽アカデミーで学び、パーカッション奏者(打楽器)として数々の賞を得るに至る話である。ひたむきな情熱のもとでの練習の中から音の強弱や、柔らかさ、硬さ等を手の動かし方から学んでいく、そして全身で音をとらえるのである。本人の才能は勿論であるが、随所に「努力」「戦い」「練習また練習」という言葉を使用しているし、ハンディのために特別視されたり、自分の演奏に対する批評も純粋に論じてほしいという気持を示している。人生や自分のやりたい事に迷いのある人はぜひ読んで下さい。

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