あーゆす15号1頁

食環境に適応する
図書館長・教授  末 次 信 行

いつものように何気なく食べている食事の内容は、民族の長い歴史の中ではぐくまれてきた食文化、食習慣やその人の嗜好などである程度は決まっている。いいかえると、何をどのようにして食べるのかはその人が生活している食環境の中で決まるのである。

現在、我が国の食環境をどのように認識すればよいのか、食べたいものはいつでも、どこでも、いくらでも食べられる飽食の時代であるがゆえに簡単ではないが、食環境を食(食料、食品)の流れとして捉え、その流れが川のように上流、中流から下流へと蛇行する状況を食の環境要因として考えてみたい。食の流れが、(1) 食料生産(農産物、水産物、畜産物、林産物)→ (2) 生鮮食品→ (3) 食品の貯蔵・加工→ (4) 食品の流通→ (5) 食品の消費→ (6) 環境への負荷 というように流れるとすると、これは決して逆流することがない流れである。そして、上流から下流に至る、そこここにいろいろな環境要因が見え隠れしているといえる。たとえば、(1) 食料生産では、BSE、鳥インフルエンザ、遺伝子組み換え作物など世界中に重大な影響を及ぼす環境要因がある。(4) 食品の流通→ (5) 食品の消費では、食のグローバル化の影響が著しく、食品の流通形態である食品スーパー、コンビニエンスストア、外食チェーンレストラン、テイクアウトなどが消費者のニーズに合致して、米食を基盤とした「日本型食生活」が極めて多様な食生活へと大きく変容したことはいうまでもない。

食環境にどのように適応するか、上流の環境要因は見えにくく、分かりにくいのでしっかりと情報を集めて自分なりの考えをもつことが肝要であろう。下流の環境要因は直接的に日々の食生活に関わるので、健康を維持し、安全・安心が確かめられる食生活を営むためには、適切な判断と選択が不可欠である。

下流の環境要因で、とくに環境への負荷を低減させるためにどのように適応すべきであるのかは社会全体の重要な問題である。食品廃棄物(食べ残し)や容器包装廃棄物の発生抑制とリサイクルについては日常的に取り組まなければならない。地球規模での環境負荷を低減することについても関心が高まってきている。生産地から食卓までの距離が短い食料を食べた方が輸送に伴う環境負荷が少ないであろうという仮説(フードマイレージ)が英国の消費者運動家、ティム・ラングにより提唱されている。輸入大国である我が国は、食料輸送に石油エネルギーを消費し、地球温暖化と深く関係しているのである。日本にも地域で生産したものをその地域で消費するという考え方(地産地消)があり、これもまた環境負荷を低減する望ましい消費活動といえる。

味覚の秋である。各地で旬の作物、魚介が収穫されている。生き生きとした旬の食べ物の味、香り、色彩を楽しむことが地球温暖化を少しでも抑止しているのだと考えたいのである。

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