あーゆす15号3頁

私 の す す め る 3 冊
助教授(教育学)  大 久 保  智
1 『種まく子供たち : 小児ガンを体験した七人の物語』 佐藤律子 編 / ポプラ社
私が解説するまでもなく本書は「小児ガンの体験談集」であり、編者が「はじめに」で、その趣旨を語っている。「闘病している子供たちは、世の中にたくさんの<種>をまきつづけています。元気の種、勇気の種、思いやりの種……。そして、どの子供も野の花のように凛としています。その種がいつか芽ばえ、たくさんの人の心のなかで育つことを願って……」と。「凝縮された時間を生きている」ひとりひとりの子供の魂からの叫び声をどうかしっかりと聞き届けて下さい。
2 『がんばらない』 鎌田實 著 / 集英社
本書を読みながら私自身何度も涙した。「実に見事に落ちぶれた病院」、信州、諏訪中央病院が、全国から注目の的となる理想的地域医療病院へと成長していくプロセスを描いたものである。病院関係者、患者、地域の人達の実になまなましい人間的姿が浮かび上がってくる。病院入口の知的ハンディをもつ人々の書、「がんばらない」「生きている」「ありがとう」の作品が現代医療のあり方にすごい迫力で問題提起をつきつけてくる。情報長寿社会で生きる人間のさびしさに目を据えた医療について考えさせられる本である。
3 『バカの壁』 養老孟司 著 / 新潮新書
読後、目から鱗が落ちた思いであった。何かがちがって映るのである。この眼に。外の世界が、そして現象が。たしかに色々なことが書かれている。自分、意識、言葉、身体などなど。しかしどの角度から切られても、出てくるのは人間の「知る」、「わかる」という営みの実体である。魚をとる投網のごとくにカテゴリーを投げかけて現象を捉えていたはずの私の認識論が根底から覆された思いである。著者の語る大地に根ざした二元論の立場に立てば、そうではない政治・経済・宗教・科学などの皮相性がありありと見えてくる。

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