あーゆす15号4頁

『出口のない海』を読んで
人間生活専攻2回生  藤 田 晴 菜

この本は、戦争の話です。そして内容は主に人間魚雷「回天」のことについて書かれていました。私は回天のことは知りませんでした。回天は敵艦を発見したら海中で母艦から発進し、途中でいったん浮上。潜望鏡で敵艦の位置を確認し、後は深度数メートルの海中をただひたすら命中するまで走らせるというものでした。脱出装置はなく、それは発進と同時に死を意味することになります。回天に乗った人はいったいどういう気持ちで訓練に望んだのだろう。死ぬとわかっていながら回天を発進させる気持ちは、家族を残して一人回天の中で死ぬ気持ちは、どういったものだったのだろう。正直そんなこと恐ろしくて考えたくもない。そんな状況におかれた時、私は果たして人間でいられるのだろうか。なんら変わりない生活をしていて、夢もあり、これからいろんな経験をして人間的にも成長していく時期に、戦争になって軍人精神を叩き込まれたり、いろんな訓練を受けさせられたりしたら、今までの生活とのあまりの違いに現実を受け止められるのだろうか。真正面から戦争に立ち向かっていくことができるのだろうか。私にはとても、すべて受け入れる自信がありません。でも戦争は実際にあったことで、当時の人はそれに従うしかなかった。受け入れることしか選択肢はなかったわけだから、その当時の若者たちのパワーが戦争に使われたことは、非常に残念なことだと思いました。その当時は国のために命を捨てることは当たり前だったのかもしれない。この本の中で、主人公の並木に、弟のトシ坊が「兄さん。お国のために立派に死んできてください!」と言っているシーンを読んだ時、強い衝撃を受けました。弟は六年生なのに…。まだ小学生なのに…。それなのになんの疑いもなく国のために死ねるように教育を受けている。すごく恐ろしいと思った。弟のトシ坊はそれが正義だと思ったのだろう。国でなくとも家族のために恋人のために死ぬことが、正義であって良いのか。弟のトシ坊が言った言葉は私の心に深く残りました。戦争はすべてを狂わせてしまうものです。当時の人は戦争を起こすことによってどんなメリットがあるのかをちゃんと考えたのだろうか。疑問に思いました。勝てる戦争ならしても良いのか。もし勝てる戦争だとしても相手国のことはどうでも良いのか。自分たちさえよければそれでいいのか。それではあまりにも幼稚すぎないか。大人であるならば武力というかたちはさけてほしかったと思ったし、人間の未熟さを感じました。この一冊の本を通して命の重さをあらためて感じました。そして死んでいった人も、生き残った人も、それぞれの心の中に大きな傷痕を深く刻んだ戦争が憎いと感じました。平和とは何か、自由とは何なのか、この本には色々と考えさせる要素が多くあるよう思います。戦争を題材にしている本は暗く重々しいものですが、この本は戦争という重々しい中に、夢や希望というものも内容として含んでいたので読みやすい物語であったように思います。感じるもの、得たものは大きかったと思うのでぜひいろんな人に読んでもらいたいと思いました。

『出口のない海』 横山秀夫 著 / 講談社

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