あーゆす18号1頁

"芸術"と"アート"
現代社会学科・教授(グラフィック・アート)  森  俊 夫

最近、"アート"という言葉をよく耳にする。"芸術"といえばなんとなく崇高なもので自分たちの日常生活から遠い存在のものというイメージを持っている人が多いのではなかろうか。それに比べて"アート"はなんとなく軽い。日本で"芸術"という言葉に替わって"アート"という言葉が特に頻繁に使われるようになったのは1990年代に入ってからだと思われる。今日ではジュエリーアート、ネイルアートなど何か洗練されたイメージを持たせたい時に、それらがさもアートのジャンルに入るかのように使われる。また、活力を失った都市の再開発を目的とした"アートによる町おこし"、"アートによる商店街の再生"から福祉分野における"アートの癒し効果"など"アート"を使った試みがさまざまな形で行われている。なぜ"芸術"でなくて"アート"なのだろうか。"芸術"はもともと"アート(art)"の訳語であった。"芸術"、"美術"、そして"音楽"などの言葉は明治維新以降の西洋化の過程で出来上がったものだと言う。そのあたりの事情は、近年詳しく研究されている。アートと芸術に関する言葉の由来が詳しく研究されるようになった理由として、現在が明治期のはじめに似た社会の大きな転換期に差し掛かっていることが考えられる。そのあたりに興味のある方には、以下の書物をお勧めしたい。古きをたずねて新しきを知るよい機会となるかもしれない。

『日本美術誕生 : 近代日本の「ことば」と戦略』 佐藤道信 / 講談社選書メチエ92
『眼の神殿 : 「美術」受容史ノート』 北澤憲昭 / 美術出版社

 

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