あーゆす18号2頁

ことばの力
児童教育学科・教授(幼児教育学)  照 屋 敏 勝

ことばは力であり、エネルギーである。古代人もことばを言霊と考えていた。つまり、ことばには霊力や魂が宿っていると考えていた。ことばは心的エネルギーや魂の具現化したものである。

ことばには4つの大きな働きがある。

1つは、伝達・コミュニケーション機能である。

2つは、思考・認識機能である。人間はことばを使って思考したり、認識したりする。

3つは、行動調整機能である。人間はことばによって自他の行動をコントロールするようになる。

4つは、創造機能である。文学作品の創作にはことばは不可欠である。ことばは文化創造の源泉である。

ことばは、そのほかにも命名機能や癒し機能や支持機能などいくつもの機能をもっている。

特に、個々人がもっている「好きな言葉」はその人の生活や人生において大きな意味や力をもっている。私にもそういうことばがいくつかある。

1つは、道元禅師の「切に思ふことは必ず遂ぐるなり」ということばである。『正法眼蔵随聞記』の中に出てくることばであるが、最初に出会ったときとても感動した。道元禅師の意志力と内面の強さを感じた。

2つは、「大事の思案は軽くすべし」ということばである。これは佐賀藩の鍋島家の家訓の一つである。以前に『家訓』という本の中で読んで記憶に残っていたが、意味をもつようになったのは人生の大きな決断をしたときである。勤務していた沖縄の大学をやめて仏教を学ぶために家族で京都に移ったときである。このことばが決断を支えた。

3つは、ヴィクトール・フランクル(精神科医)の「生理的に下り坂になったとき、人生はようやく上り坂となる」ということばである。フランクルはユダヤ人としてアウシュビッツでの過酷な体験をした人であり、その体験を下に書かれた『夜と霧』の著者である。私が新しい旅立ちをしたのは40代の後半であるが、そのころ、人生がおもしろくなってきたなと強く感じた。

4つは、スイスの哲学者アミエルのことばである。「心が変われば/態度がかわる 態度が変われば/習慣がかわる 習慣が変われば/人格がかわる 人格が変われば/人生がかわる」心が変われば人生がかわるということである。『アミエルの日記』(全8冊、岩波文庫)は現在絶版になっているので、東京神田の古本屋街を探し回って見つけることができた。読んでみると、「日記」という名の哲学書である。

5つは、言語哲学者ウィトゲンシュタインの「私の言語の限界が、私の世界の限界である」ということばである。20数年前、あるシンポジウムで、このことばに出会ったとき強いインパクトをうけた。ことばが、その人の世界を決定するのである。

6つは、永六輔のことばである。「生きているということは/誰かに借りをつくること 生きていくということは/誰かに借りをかえすこと 誰かに借りたら/誰かに返そう 誰かにそうしてもらったように/誰かにそうしてあげよう」 永氏はお寺の出身なので、このメッセージにも仏教的な生き方が反映されている。世の中は「おたがいさま」であり、「おかげさま」である。

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