あーゆす18号6頁

『余命1ヶ月の花嫁』を読んで
子ども未来コース2回生  中 田 満 里 菜

ある日、本屋で売り上げランキングを見ているとこの本がランクインしていた。表紙にはうつむき加減の花嫁の写真。TBS「イブニング・ファイブ」で放送されたドキュメンタリーが書籍化されたものだった。私はタイトルと彼女の雰囲気に惹かれ、この本を購入した。

彼女の名前は長島千恵さん。23歳の秋に突然乳がんに襲われた。取材が始められたのはがんが発見されてから1年4ヶ月後。彼女の乳がんは転移し、かなり重い状態になっていた。しかし、彼女はすごく柔らかな笑顔で写真に写っている。とても重いがんに体がむしばまれているようには感じられない。

だが、この状態になるまでに彼女は抗がん剤による治療を受け、吐き気や髪の毛が抜け落ちる副作用に耐え、左胸の手術を行っている。しかし、わずか半年で再発してしまい、胸骨と肺に転移してしまった。家族は余命1ヶ月と宣告される。家族や友人は彼女のために何をしてあげられるか考え、結婚式を挙げさせてあげることにする。

私はこの本を読むまで「乳がんは40代・50代と年齢を重ねてから発症する可能性がある」「手術をすれば治る病気だ」と思っていた。しかし、実際は私たちと同年代の20代、30代前半で乳がんになる方も多い。「若年性乳がん」と称されるこの年代の乳がんは進行が非常に早いため、手術を行っても再発する可能性が高い。「治るがん」とは決して言い切れないのだ。千恵さんの場合も一度は手術をしたが、再発してしまった。

闘病の思いを同じ若い人に伝えたい。年配になってからの乳がんの情報はたくさんあるけれど、若い人の情報は皆無に等しい。若い人でもがんになる危険があるというのを知って欲しい。また、同じような年代の人でがんに苦しんでいる人に自分一人で闘っているのではないと思ってほしい。そう思い彼女は取材を受けたと文中で述べている。

私たちは今こうして毎日健康に生活できている。しかし、いつ病気になるか予測することはできない。だが、つい「私には関係ない」と他人事に考えてしまうところが少なからずあるのではないだろうか。私は彼女がブログの中でつづったこの言葉がすごく心に残った。

みなさんに明日がくることは奇跡です。
それを知っているだけで、日常は幸せなことだらけで溢れています。

この言葉を目にした瞬間、私は毎日来ることが当たり前だと思いすぎ、1日1日を大切にしていないと感じた。「今日やらなくてもまた明日もあるし」とつい思ってしまう。他人が自分のためになにかをしてくれていても毎日してもらっていると当たり前に感じてしまい、つい「ありがとう」と言うのを忘れてしまう。しかし、それは絶対に忘れてはいけないものなのではないだろうか。自分の気持ちを少し変えるだけで世の中はがらりと変わる。今まで生きてきた環境も周りにいる人たちもみんな同じなのに、たくさんの幸せを感じることが出来る。私は千恵さんの生涯からこのことを学んだ。

彼女は最後まで笑顔を忘れずに病気と闘った。最後まで人を愛し、愛され、人を支え、支えられた24年の人生を生き抜いた。長くて先の見えない真っ暗なトンネルにいるような闘病生活を毎日必死に生きている千恵さんの姿を想像すると、自然に涙がこぼれた。自分の余命が1ヶ月だと知らなかったが、すごく内容の濃い1ヶ月を過ごした。私が彼女のように突然乳がんになり、抗がん剤で髪の毛は抜け、手術をして胸がなくなり、それでもまた再発してしまったら…絶対に彼女のように笑って生活をすることは出来ない。彼女の強い心と正面から病気と闘っている姿に心を打たれた。

この本は、自分たちが日頃どれだけ無意識の間に幸せをたくさん得ているのか。いつ病気になってもおかしくないのだと気づかせてくれた。そして、病気になった時、周りにいる家族や友人など大切な人が自分にとってこんなにも大きな存在となって生きる力を生み出してくれるのだということも知った。

何度読んでも涙が溢れてくる本である。

みなさんも機会があればぜひ読んで欲しいと思う。

『余命1ヶ月の花嫁』 TBS「イブニング・ファイブ」 編 / マガジンハウス

 

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