あーゆす19号4頁

私 の す す め る 3 冊
青春時代、特に学生時代には、恋愛と結婚、戦争と平和、政治と経済、教育と福祉等々、誰もが直面し避けて通れず、否応なしに突きつけられる課題である。「読書の糧」、「先人に学ぶ」、幾多の図書の中から適切な1冊を選ぶ?! これは至難の業であり、無理というもの、そこで、青年時代に読んで、今も深く印象に残っている図書を紹介することで、その責の許しを乞いたい。
児童教育学科・特任講師(教育学)  増 田 秀 嗣
1 『竜馬がゆく』 司馬遼太郎 著 / 文芸春秋(文春文庫)
多くの歴史小説の中で、特に楽しく活力を与えてくれる小説の一つだ。今も、根強い人気を持ち続けている歴史上の人物−坂本龍馬、幕末の争乱期に、一介の郷士にすぎなかった坂本龍馬が、あれほどの活躍を、なぜ果たし得たのか。紆余曲折を経て、勝海舟との出会いがあり、「薩摩連合や大政奉還、あれは全部龍馬が一人でやったことだ」と、維新史で勝海舟に言わしめたほどの活躍をした龍馬、それでいて、青春の余韻を残したまま、世界に羽ばたく海援隊の夢も、目前の明治維新の実現も見ることなく、33歳の若さで無念の死を迎えた龍馬、もちろん非凡な運と才能を持ち合わせていたとはいえ、僅か10年の短期間を駆け抜けた行動の中から、人生哲学を追体験することは有意義で、何か一つ重要なポイントを学ぶものがある小説である。
2 『人間の条件』 五味川純平 著 / 岩波書店(岩波現代文庫)
昭和18(1943)年、植民地の満州で満鉄調査部の勤務だった時に、美千子と知り合い結ばれる梶は、招集免除を条件に労務管理の職につくのだが、その展開は次々と迫力ある情景を突きつける。植民地の軍隊における暴力と残虐行為、やがては、良心と呵責、苦悩と葛藤、そして戦争に疑いを持ち、反抗には過酷な制裁が展開され、迫害と屈辱、人間の善意と希望、愛と尊厳までをも、無情にも濁流のように押し流す戦争の悲惨さを告発する。根底から魂を揺すぶられる迫力で、忽ち読み耽る状況に陥る戦後文学の記念碑的な傑作と評される図書である。
3 『数は生きている』 銀林浩, 榊忠男 共著 / 岩波書店
数とは何か? 多くの図を示しながら対話形式で語った、数の世界を実に分かり易く紹介した図書である。1、2、3、……という数の歴史、ゼロの発見、小数のしくみ等々、代数学の基本定理にまで展開する。自然数、小数・分数、無理数、負の数、複素数にいたるまで、数の世界が広がることが、いかに必然であるかを紹介してくれる。分数のわり算では、なぜ分母と分子をひっくり返してかけるのか、負の数どうしをかけるとなぜ正の数になるのか、などなど、平素、疑問をそのままにしていたことが、大いに考え直させられ、「なるほど、わかった!」と、まさに「目からうろこが落ちる」、算数・数学の見方が大きく変わる名著である。

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