あーゆす19号6頁

『教師のこころの扉をひらく』を読んで
臨床心理学科4回生  安 田 小 響

大学生活4年間、ボランティアという形で沢山の子どもたちと関わってきた。この本を読んで、その関わり方を根底から再考させられる思いがあった。子どもたちを支える先生や保護者、職員の方々が、子どもたちに対して、また自分自身に対してまっすぐに生きるという強い姿勢と信念を持って子どもとともに生きている様がありありと記されており、飾らず、無理をせず、素直なままで自らの心の扉をひらくことの大切さが語られている。

この本に登場する大人たちは皆、子どもの成長を見守り続けていく中で、子どもたちを通してそれぞれ大切なことは何か、に気づかされている。「これまで息子が何かを欲しがると、それを買うか買わないか、どちらかの選択しか頭にありませんでした。しかし造形教室に参加することで、第三の選択肢として<つくる>ことがあることを教えていただきました。」と語っている。子どもが、自分の作りたいものが完成したときの達成感を味わっている横で、それを見守る母親も子どもとともに喜びを感ずることで成長しているという新しい発見をしている。この一体感を味わうというのは、本当にすばらしい瞬間であると思う。そういった発見によって大人と子どもがともに生かされているということを体感しているのではないか。子どもの無心なものづくりから、母親の心の扉がひらかれたのであろう。この『教師のこころの扉をひらく』で筆者は、大人と子どもが一体になる瞬間について、「教師の言葉が生徒の心にしみわたっていくのはどのような場合なのだろうか?」という問いを通じて、「語りかけることが誰かの言葉の借りものではないことと、相手に向けて語っているその言葉が、自分自身にも向けられていること、つまり話し手と聞き手がその言葉を自分の置かれた状態でそれぞれ味わい、さらに深めていく"共感の場"がつくられることが大切である」と示唆している。私はこれらのエピソードを読んで、ボランティア先の小学校の先生の言葉を思い出した。「子どもたちに対して、さっきのあのことについてもう一度伝えようと頭で考えてから話そうとしても、子どもたちには伝わらないものですよ。その時に言わないと。」 指導とは、その時、その場で、その子とともにということ以外にはないのではないか。もちろん信念を持って。子どもたちと接し、その時をともに感じて大切な何かをつかみたい、その重要性をまた鮮明に思い返すことができた。今まで、子どもたちと関わる上でどうしたらよいか分からず戸惑うことも沢山あったが、それは、私自身が心の扉を開くことができなかったからである。そのことに今回、改めて気がつくことができた。

この本は、ひとつひとつのメッセージがまるで乾いた砂に水がしみこむごとく、心にしみわたるものばかりであった。それはこの本を手にする私たちにも「心の扉をひらきなさい」というエールを送ってくれているのである。人生の先輩の暖かいメッセージを心に受けとめながら、これからも沢山の子どもたちと一緒に多くの発見をし、成長していきたいと思う。そういう点でも、是非、子どもの育成に携わる多くの人々にこの本を読んでもらいたいものだ。いや、子どもの育成に携わらなくとも、自らの心の扉をひらくためにも。今日も子どもたちは、そういう大人にめぐりあうことを願っている。

『教師のこころの扉をひらく』 佐久間勝彦 著 / 教育新聞社

(やすだ さゆら)

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