あーゆす21号4頁

「本」のある空間
京都文教短期大学図書館  續 木 好 子

 図書館で新しく購入された本は、受入・目録・装備作業を終えると新着図書コーナーに並びます。一冊ずつ本の顔を眺めての作業は、新鮮でわくわくしてきます。次の新着図書が来ると、コーナーに並んでいる先の図書は、書庫へと居場所を移していきます。

 一冊、また一冊と書庫への排架作業を続けながら、手にした図書『子どものためのたのしい音遊び』を所定の場所へ並べます。ひとたび書庫に並らぶと、表紙は見えず背表紙だけになり、本の印象は変わってしまいます。次の機会にこの本をすぐに見つけることができるだろうか。それぞれの本が、それぞれに目に触れるようにしなくてはと思う瞬間です。この本の前後に並ぶ図書には『サウンド・エデュケーション』『やわらかな音楽教育』『子どもと音楽』…更にショパン、シューベルト…音楽写真文庫、作曲家シリーズがあります。昨日貸出利用があったブラームスの空きスペース。そしてショパンの本。ショパンの本のささやきが聞こえそうです。

 次に手にした図書『宮崎駿、異界への好奇心』の表紙には「宮崎作品に〈古代の日本文化〉…自在に読み解く…」と書かれ、思わず目次に目を通すと、「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」の文字が目に入ります。このまま書庫に埋もれることなく、利用者の目に留まってほしいと思わず祈ります。閉館前、書庫内の点検に入ると、背表紙のタイトルが誘惑的に目に飛び込んできます。読んで見たいと思う本があちこちに見えてきます。時間ができた時に読もうと思うのですが、そのまま忘れさり、「時間はつくるもの」というフレーズが頭をよぎります。

 毎年、夏季休暇中に実施している蔵書点検でも、同じ事を思います。図書館内全ての本のバーコードを一冊ずつ読み込む折に「あれっ、こんな本が」と思いがけず自分のお宝を発見し、後日借りることになります。パソコンの検索画面で本の書誌情報を見るのとは違って、とても感覚的なものです。

 大学生や院生が、短大図書館の雰囲気が好きでよく利用しますと語ってくれます。大学図書館に比べると、広さやパソコンコーナー等設備面ではとてもかないません。席数が少なくて狭い閲覧室、書庫の通路は狭く、急な階段による高低差のある書庫は、バリアーだらけです。物理的な問題解決には新しい図書館建設しかない環境下、常に利用者の動きに目を配り人的な側面からカバーするしかないという思いです。それだけに、このような声に勇気づけられ、迷いは払拭されます。

 一般的に大学図書館は、調べものやレポート課題の情報を得るところですが、本好きで本のにおいや程よい思考空間を求める人が好んで集まるところでもあります。過去の知恵は現代を生きる知恵を生むのではないでしょうか。誰に邪魔されることもなく本と向かい合い、古典や名著を読み、静かにものを考え、人生のヒントを得る場でないかと思います。

 インターネットの普及は、学術情報サービスを電子化の方向に押し進めてきました。また、アマゾンの「キンドル」の話題で知られるように、出版や流通のネット化は一段と弾みがつきそうです。カリフォルニア大学の石松久幸氏は、ユーザー・フレンドリーに作られたデータベース、電子書籍の普及に伴い、グーグルが世界中の大図書館の蔵書をデジタル化し終えたとき、図書館に足を運ぶ人がいるのだろうかと、デジタル環境下の図書館を話題にしています(「出版ニュース」2009.9)。

 図書館の機能を考える時、本を通して利用者とのコミュニケーションが時空を越えて展開される「場」としての要素を見落としてはならないと思うのです。デジタル思考とアナログ思考のような質的な違いを生むのかもしれません。

(つづき よしこ)

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