あーゆす21号5頁

 
第2回 京都文教大学書評コンテスト 結果

 4月に行われた第2回書評コンテストの結果を掲載します。このコンテストは「京都文教大学の100冊」中の気に入った1冊を読み、みんなに紹介しようというものです。
 今回は13名の応募があり審査委員の先生方の厳正なる審査の結果、最優秀賞・優秀賞が決定しました。
最優秀賞
 文化人類学科  吉岡 太朗  「わからない」という方法
優秀賞
 臨床心理学科  天田 大樹  萩原朔太郎詩集
 臨床心理学科  竹嶋摩利子  ダ・ヴィンチの謎 ニュートンの奇跡―『神の原理は』いかに解明されてきたか―
 臨床心理学科  島本真希子  てつがくを着て、まちを歩こう
 臨床心理学科  山村まりこ  ソロモンの指環
 文化人類学科  神保 宗尚  知的複眼思考法

 
★最優秀賞 書評
「考える」という方法(橋本治『「わからない」という方法』)
文化人類学科4年  吉岡 太朗

 「わからない」という方法は本書のどこにも書かれていない。
 ここに書かれているのは「橋本治」という方法である。作家・橋本治は自らに降りかかった困難にどう対処してきたのか。どのようにして様々な仕事を成し遂げてきたのか。そういうことが書かれている。
 要するに「親爺の苦労話・自慢話」なわけだ。顔見知りの親爺ならまだいいのかも知れないが、少なくとも私は橋本治をよく知らない。知らない親爺の話を延々と聞かされて面白いのか。
 これが面白いのである!
 困難その1:処女作が完成して書くことがなくなってしまった橋本治。その頃、出版界では「活字離れ」が叫ばれ出す。「よっぽどつまんない本ばっかりが多いんでしょ」そうはいうものの、このままでは淘汰されてしまう。そこで彼が考え出した方法とは?
 困難その2:橋本治のもとに「「エコール・ド・パリ」(*)をドラマにしてみませんか」という仕事が舞い込む。でも彼はそもそも「エコール・ド・パリ」を知らない。そんな彼がおのずととってしまった「天を行く方法」とは?
 困難にぶつかり、窮地に追い込まれても、橋本治はけして余裕を失わない。困難と格闘し、最終的には、「橋本治」という方法で困難をねじ伏せてしまう。本書は痛快な冒険小説なのだ。
 橋本治は「わかんねー、わかんねー、どうしよー」といいながら、「なぜわからないのか」をひたすら考える。「わかるとはどういうことなのか」を考え続ける。すると、わかってしまうのである。本書は知的興奮にあふれた推理小説なのだ。
 では、面白いだけの本なのか。
 とんでもない。とても役に立つ本である。「わからない」という方法は確かに本書には書かれていないが、その方法は存在する。そう、「あなた」という方法として。本書はそのことに気づかせてくれる。
 20世紀は「答え」がどこかにあった時代である。昔なら、人のいうことをただ聞いていれば「正解」に辿り着けたのだ。そんな幻想はもう潰えた。これからは自分の頭で考えるしかない。でも「考える」ってどういうこと? それを考えるためのヒントが本書には書かれている。
 というよりも、本書は橋本治というひとの、「考える」ということについての思考の軌跡そのものなのだ。
*1920年代を中心にパリで活動した、国籍も画風も様々な画家たちの総称。ルソー、ユトリロ、シャガールなど。

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