あーゆす4号1頁

図書館は出会いの空間である
図書館長・教授  照 屋 敏 勝

人生は出会いである。出会いの豊かさが人生の豊かさである。一生涯のあいだにどういう出会いをするか。出会いの量と質と種類が問題である。人格を構成する要素は多様であり、出会いも多様性が要求される。しかし、人生は有限であり、出会いの量も必然的に制約される。したがって、出会いの質が問題になってくる。

人生において本や芸術作品との出会いは大きな比重を占めており、それらが人間の精神性や想像性を豊かにする。そのことが人間と動物との大きな違いでもある。その人間の特性をいかに豊かにするかが教育の課題でもあり、一人ひとりの自己課題でもある。

日本最大の図書館である国立国会図書館には約750万冊の本や資料が収蔵されている。無尽蔵ともいえる数である。その中には多くの貴重本も含まれている。その意味では、図書館は一種の宝蔵館である。われわれが毎日1冊ずつ読んだとしても1年間に365冊しか読めない。一生涯かかっても2万7千冊ぐらいである。実際にはその2〜3割の5000〜8000冊ぐらいがやっとである。宝や恵のほんの一部しか享受できないのである。

私が早稲田大学に在学していたときにも、図書館でいくつかの貴重な本に出会った。早稲田は中央図書館(200万冊)とその他のキャンパス図書館を含めると約400万冊の文献や資料を所有している。私の文学部(教育学専修)での卒業論文は「Robert Owenの幼児教育思想について」であったが、基本文献の一つであるTHE BOOK OF NEW MORAL WORLD(1842『新道徳世界の書』)の原書はイギリスから取り寄せてあった。翻訳があるとは思えなかったが、検索カードで調べてみたら、偶然古い訳書を発見して大変驚いた。ロバート・オゥエンのその他の原書や伝記もあることがわかった。ないだろうと思っていた本がつぎつぎ出てきた。長い歴史のある大学図書館は資料の宝庫だと思った。

図書館は古い文献や資料との出会いだけではない。そのほかの出会いもある。閲覧室の机は大きなものだった。資料をひろげても余裕があった。向かいに座っている学生の資料や本もいつも視野の中にあった。ある時、向かいに座っている女子学生の本が閉じたまま置かれていた。『わが青春に悔いなし』(加藤恭子)という本であった。興味をそそられたので、帰りに書店で買って読んでみた。加藤夫妻のアメリカ留学の苦闘の記録であった。帰国して夫は名古屋大学の物理学の教師になり、妻は早稲田大学のフランス文学の教師になる。

大学院のとき、こういうこともあった。参考図書室で私の右隣に女優の吉永小百合さん(文学部西洋史専修)が座ったことがあった。高校時代からの大ファンだったので、心中おだやかではなかった。学習は全く集中できなかったが、宝石のような一日であった! これも一つの出会いである。

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