あーゆす5号3頁

私 の す す め る 3 冊
助教授(国語学)  森 川 知 史
1 『人生の習慣ハビット』 大江健三郎 / 岩波書店
本の書き手がいつも全人格を懸けて書いている訳ではないし、作家の仕事がそういうものである必要は必ずしもない。ただ、子供の誕生以後の大江に、そのような姿勢を強く感じるのは私独りだろうか? 大江の講演集だが、著者が生れ育った土地の影響という根元的なことから、読むこと、書くことの意味が問題にされる。「人生の習慣」は最後に置かれた講演のタイトルだが、ここでは「生き方」に言及している。
2 『声の文化と文字の文化』 W-J・オング / 藤原書店
我々は最早、文字のない世界というものを想像できない。本書は、文字を知らない文化と、文字を知って以後の文化とでは根本的な違いがあると指摘する。現在の我々の話は、文字に慣れた者のものであって、書く技術が人間の意識にもたらした影響から離れられないという。「人間とはこういうものだ」と我々が信じ込んでいる多くの特徴が、実は文字というものの出現によって変容したものであるなら、我々の認識の多くを改めなければならないのかもしれないと考え込まされる。
3 『「私」は脳のどこにいるのか』 澤口俊之 / 筑摩書房
脳科学者である著者の立場から、自我の脳内メカニズムを説き明かそうとする。「自分とは何か?」という問いに哲学的にではなく、科学的に応えようとするユニークな一冊である。人格や理性や自我が損なわれた事例などをふんだんに示しながら考察は進められる。「自分って何なのか?」との思いに捕らわれてしまう。

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