あーゆす6号1頁

わが青春に深く刻印されたもの
幼児教育専攻主任教授・前図書館長  照 屋 敏 勝

私の読書体験の中で私の精神に深く刻印された書物が3冊ある。1冊は中学3年のときに読んだWilliam Shakespeare (1564〜1616)の『オセロ』である。はじめて読んだ本格的な物語であった。圧倒的で感動的であった。Shakespeareの作品とはこういうものなのかと思った。

2冊は高校3年の時に読んだ小倉豊文(広島文理科大学教授)著の『広島原子爆弾の手記・絶後の記録』(1948年)である。詩人・彫刻家の高村光太郎も3回も読み直したという本である。この本は兄がどこからか借りてきたものであった。家の仏壇に別の本と一緒に2冊おいてあったので、読んでみたのである。大変衝撃的な内容であった。戦争と原爆に対する認識を根底からくつがえすものであった。この本は最初『亡き妻への手紙−広島原子爆弾の手記』の予定であったように、原爆で亡くなられた奥様への手紙の形式で原爆投下直後の惨状が詳しく報告されている。アメリカ軍の原爆投下による広島・長崎での大量虐殺はナチスドイツのユダヤ人大虐殺、日本軍による中国での南京大虐殺とともに「人類の三大虐殺」と言われている。広島原爆資料館によると、原爆が投下された1945年12月までに14万余の方が亡くなり、現在までに221,893人の犠牲者が慰霊碑に祀られているということである。

3冊は大学2年のときに読んだ『医師ベチューン』である。現在は、岩波現代選書の中に『医師ベチューンの一生』(Roderick Stewart、阪谷芳直訳、1978)があるが、私が読んだのは別の本であった。私はその本を東京・千駄ヶ谷の小さな図書館で発見して、読み、そして感動した。ノーマン・ベチューン(1890〜1939)はカナダ、アメリカ、イギリス、スペイン、中華人民共和国などで活躍したカナダの世界的な外科医である。カナダ政府は1972年にベチューンを公式に「国家的・歴史的に重要なカナダ人」に指定した。1976年にはベチューンの生家が誕生当時の状態に復元されて、「ベチューン記念館」が開館された。1930年代にはカナダ国立映画局によって伝記映画『ベチューン』も製作されている。

ベチューンは晩年の2年間は中国の八路軍 (のちの人民解放軍)の中で献身的な医療活動を行った。「彼は……無私で、寛容で、明晰な人物であり、その職務に対する献身は無類であった」と評されている。毛沢東は彼の死に際して「ノーマン・ベチューンを記念する」という重要な文章を書いている。石家荘市には「ノーマン・ベチューン国際和平病院」も建てられ、そこに彼の大きな銅像も立っている。ベチューンの人間愛と自己の職業に徹した生き方は多くの示唆を与えている。

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