あーゆす7号1頁

大英図書館のこと
副館長・助教授  伊 藤 和 男

ロンドンを訪れる人々が必ずと言っていいほど行く場所の1つが大英博物館である。その貴重な数多くのコレクションの中に、大英図書館所蔵のマニュスクリプトがある。19世紀中頃に今日の姿が完成されたこの博物館は老朽化のため修復工事が行なわれ、その結果館内の有名なリーディング・ルームが従来のような許可された人々のみ利用可能なものから 一般の利用可能なものに姿をかえることになった。この大英図書館のリーディング・ルームはかつてここで研究のための読書に人生の貴重な時をささげた多くの人々の歴史、その重みを充分感じさせてくれる。今はレファレンス専用のものとして一般に公開されている。そして館内にあった大英図書館本体は、博物館の少し北方にあるセント・パンクラス駅の西隣りに1997年に移転し、新たにオープンしたのである。

この古い駅舎の隣りに位置する大英図書館は、外観がイギリス的というより、東洋的、多国籍的とも形容しうるユニークなものである。はじめてロンドンを訪れた時、私が見たシェイクスピアの二つ折り判の本、ベートーヴェンの第六交響曲、「田園」の自筆楽譜、詩人ワーズワースの詩を愛妻メアリーが書写したものなど、実に多くの芸術家のマニュスクリプトのコレクションが今回も私をむかえてくれた。人類の長く苦しい歴史の中に明るい、強くたくましい、なぐさめの光を与えてくれた人々の自筆に接し、深い感動をおぼえたのである。イギリスの国立図書館であり、許可された人々以外はその新しいリーディング・ルームには入れないのであるが、一般の人々のために常に展示されているマニュスクリプトに直接ふれることが出来るのはすばらしいことであろう。出口の所にいる館員が口頭によるアンケート調査をしていた。 私は展示物の照明が暗くて見にくいことを指摘したのだが、強烈な光から大切なマニュスクリプトを守る目的があるとの答が返って来た。でも、もう少し工夫をという思いを抱きながら図書館を出た。 外はピアッツァと呼ばれる広場になっていて、何かイベントのある時などはここを利用するという。

この新しい大英図書館にはカフェ、レストランがあり、訪れる人々がゆっくりと時間をかけて見学出来るようになっている。ロンドンの博物館、美術館などは、最近の観光客の増加などにも対応するためであろうが、必ずといっていいほど新しいカフェ、レストランを作り、自国の文化財産の世界的亨受、鑑賞とも呼びうるものを目指し努力している様子が感じとれる。

図書館で出会ったシェイクスピアのあとを追って、私は新しくテムズ河の南、サウスバンクに出来たグローブ座を今回も訪れた。1998年にオープンしたもので、シェイクスピア時代のグローブ座を復活させたものである。館の内外に見られたシェイクスピアの「この世はすべて舞台」という有名なセリフが深い感動をともなって私の脳裏を去らなかった。

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