あーゆす7号3頁

私 の す す め る 3 冊
助教授(国際関係論)  林  法 隆
1 『古典外交の成熟と崩壊』 高坂正堯 / 中央公論社
著者の描いた外交は、第一次大戦以前のヨーロッパを彩った「古典外交」であった。その古典外交も時代の変化とともに、存在理由が奪い去られてしまった。それにもかかわらず、「古典外交」に近い外交が現代外交より大きな成功を収めた例を、著者は重視する。それは外交の理論より、智恵であり、自己主張と自制、協力と自立とのバランス感覚、そして外交の限界を知る「慎慮」である。アメリカのユニラテラリズム(単独行動主義)が目立つ今日、本書の示唆はますます教訓的である。
2 『世界戦争犯罪事典』 秦郁彦, 佐瀬昌盛, 常石敬一[編] / 文芸春秋
近年、「戦争の記憶」や「歴史認識」が問題とされることが多い。しかし、より重要なのは記憶より記録であり、 歴史認識よりも歴史そのものである。本書は20世紀の「戦争犯罪」を正確に記録することに主眼を置いている。 「東京大空襲」「ヒロシマ・ナガサキ」「カティンの森」から、大戦後の「天安門事件」「ポル・ポト政権の虐殺」 「タリバンの虐殺」そして「米国同時多発テロ」まで260項目ほどの惨禍の記録がぎっしり詰まっている。 戦争を回避するために必要なのは、正確な事実の把握である。
3 『パレスチナが見たい』 森沢典子 / TBSブリタニカ
私塾で子供たちを教える元保育士が2002年3月、情勢の悪化するパレスチナを一人で訪れる。 空爆の爪痕を深く残す街には以外にも沈鬱な空気が漂っていない。失業者は半数近くいるのに、 浮浪者がいない。そこには助け合い、笑いを絶やさない人々の姿があった。彼らは家族を殺され、 家を破壊されても、翌日には花を植え、冗談を飛ばしていた。武力で脅かされても、普段通りの暮らしを続けること、 それが、パレスチナに住む人々の「沈黙の抵抗」だったと、著者は見る。

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